市販の勤怠管理システムは多機能で便利な一方で、導入費用や毎月のランニングコストが負担となるケースも少なくありません。特に、従業員数がそれほど多くない企業やシンプルな打刻管理のみを求めている現場では、市販システムがオーバースペックで「コストに見合わない」と感じることもあるでしょう。
そのため、「ICカードを活用した勤怠管理を自社で自作できないか」と検討する担当者の方もいらっしゃいます。結論から言えば、市販のICカードリーダーとPCソフト等を組み合わせることで、技術的に自作することは十分に可能です。
ただし、勤怠データは給与計算の根拠となる重要な情報です。企業の公式な労務管理として運用するには、法的な要件やセキュリティなど見過ごせないリスクも存在するため、メリットとデメリットを正しく理解した上での慎重な判断が求められます。
身近な表計算ツールを利用するものから、本格的なシステム開発まで、自作にはいくつかの手段があります。自社のITスキルや運用規模に応じて、適切なアプローチを選ぶことが重要です。
多くの方にとって最も身近なのが、Excelとマクロ(VBA)を活用する方法でしょう。ICカードリーダー(PaSoRiなど)から読み取ったID情報をExcelに取り込み、出退勤時刻として記録する仕組みを構築します。
小規模な運用であれば比較的短期間で構築でき、既存のExcel業務フローにもなじみやすい点がメリットです。ただし、ICカードリーダーとExcelを直接連携させるには専用のソフトウェアやVBAの専門知識が必要です。また、処理速度や複数人同時の打刻には向かないため、規模拡大時には限界が生じやすくなります。
より本格的で高度な仕組みを求める場合は、JavaやPHP、Pythonなどのプログラミング言語を用いて独自のWebシステムやアプリを開発する方法があります。
データベースと連携することで、打刻履歴の安全な蓄積や労働時間の自動集計、残業アラート機能なども実装可能です。複数拠点での利用やクラウド化にも対応しやすく、拡張性の高いシステムを構築できますが、高度な開発スキルと相応の開発期間・人件費が必要になります。
近年注目されているのが、kintoneやPower Appsといった「ノーコード・ローコードツール」を利用する方法です。高度なプログラミング知識がなくても、あらかじめ用意された機能や画面操作を中心にシステムを構築できるため、開発のハードルを大きく下げられます。
短期間で試作品を作成し、現場で運用しながら改善していくといった柔軟なアジャイル開発を行いやすいのが特徴です。
実際にシステムを自作・導入する際の基本的なフローを解説します。
まずは、勤怠管理の目的と必要な機能を整理します。シンプルな打刻記録のみとするか、残業・深夜労働の計算や有給休暇管理まで含めるのかなど、要件を具体化することが重要です。ここが曖昧だと、後工程で大幅な手戻りが発生しやすくなります。
次に、利用するICカードリーダーとICカード(規格)を決定します。既存の社員証や交通系ICカード(Suica等)を活用する場合は、リーダー側がその規格(FeliCaやMifareなど)の読み取りに対応しているか、また開発用SDK(ソフトウェア開発キット)が提供されているかを確認しておく必要があります。
カードをかざした際に読み取れる固有のID番号(UID/IDm)を、どのように従業員データと紐づけ、記録・保存するかを設計します。ローカルPCへのCSV出力や、社内サーバー・クラウドデータベースへの保存など、自社のセキュリティ要件に適した形式を選びます。
設計内容に基づいて、Excelマクロやプログラムを作成します。打刻日時の自動記録、従業員マスター情報との照合、二重打刻防止(エラーハンドリング)など、実際の運用に耐えうる機能を実装していきます。
一部の部署などでテスト運用を行い、打刻漏れや誤記録が発生しないか、システムの動作確認を行います。現場の従業員からのフィードバックをもとに操作性や導線を検証し、必要に応じてプログラムの改善を加えます。
動作が安定したら本格運用を開始します。システム導入と同時に、打刻忘れ時の申請ルールや直行直帰時の例外対応など、運用フローを明文化し、従業員へ周知徹底することが不可欠です。ルールの整備は、労務トラブルの防止に直結します。
市販のクラウド勤怠システムなどを導入する場合、初期費用に加え、従業員数に応じた月額ライセンス利用料が継続的に発生します。一方、自作であれば既存のPCやソフトウェアライセンスを活用できるケースが多く、外部に支払うシステム導入費用を大幅に抑えられる可能性があります。
自作の最大の利点は、自社独自の業務フローに合わせて柔軟にカスタマイズできる点です。市販のシステムでは対応しきれない特殊な勤務形態や、独自の集計ルールにも対応しやすく、現場にとって無駄のないシステムを構築できます。
費用を抑えられる自作システムですが、企業として運用していく上で注意すべきリスクも存在します。
勤怠管理は労働基準法をはじめとする法令に深く関わります。時間外労働の上限規制や有給休暇の義務化など、法改正や制度変更が行われるたびに、自社でシステムを改修し続ける必要があります。市販システムであれば自動でアップデートされますが、自作の場合はこの対応が継続的な負担となります。
自作システムでは、アクセス権限の制御や操作ログの管理が甘くなりがちです。万が一、不正打刻やデータの改ざんが行われた場合、労働基準監督署の調査等において”勤怠データとしての客観的証拠能力”を疑われるリスクが生じます。労務データは機密性が高く法的根拠となるため、極めて厳格な設計が求められます。
システムを自作した特定の担当者に知識が属人化しやすく、その担当者が退職や異動をした途端に、保守・運用やトラブル対応ができなくなるブラックボックス化の恐れがあります。詳細な設計書の整備や複数人での引き継ぎ体制の構築が不可欠です。
ICカードリーダーを活用した勤怠管理システムは、Excelやプログラミング、ノーコードツールを用いて自作することが可能です。外部サービスへの支払いを抑えられ、自社のルールに最適化できる点は大きな魅力です。
しかし一方で、自社開発にかかる人件費、法改正への継続的な対応、改ざん防止のセキュリティ対策、属人化リスクといった目に見えにくい運用コストも無視できません。短期的な外部コストの削減だけでなく、長期的な保守負担や労務管理上のリスクも踏まえて、自作すべきか市販システムを導入すべきかを慎重に判断することが重要です。
当サイトでは、ICカードリーダーの導入を検討している方に向けて、勤怠管理向けICカードリーダーの選び方や費用相場、導入のポイントを詳しく解説しています。あわせて以下のページもぜひ、ご覧ください。

非接触型のICカードリーダーといっても、利用環境や運用方法によって使いやすい製品は変わってきます。そのため、ここではよくある企業の導入ニーズに合わせておすすめのICカードリーダー3製品を解説します。
| 連携可能な システム |
クラウド勤怠システム※1や独自開発の勤怠管理システム |
|---|---|
| ICカードの 種類 |
FeliCa/MIFARE/Type-Bカード |
| その他読み取り | QRコード/顔認証 |
| 通信 | 無線LAN/有線LAN(PoE対応)/Bluetooth |
| 設置方法 | モバイル/卓上/壁掛け |
| 連携可能な システム |
アマノが提供する勤怠管理システム |
|---|---|
| ICカードの 種類 |
FeliCa/MIFARE/Type-Bカード |
| その他読み取り | 公式サイトに記載はありませんでした。 |
| 通信 | 無線LAN/有線LAN(PoE対応)/モバイル通信(4G LTE通信)※2 |
| 設置方法 | 卓上/壁掛け |
| 連携可能な システム |
公式サイトに記載はありませんでした。 |
|---|---|
| ICカードの 種類 |
FeliCa/MIFARE/Type-Bカード |
| その他読み取り | 公式サイトに記載はありませんでした。 |
| 通信 | Windows, macOSのPCへ接続 |
| 設置方法 | 卓上 |
※1 一部連携していないクラウド勤怠システムについては、カスタマイズにて対応。
※2 それぞれの機能を共存させることはできません。通信方法により機種が異なります。
※3 参照元:キングオブタイム公式HP(https://www.kingoftime.jp/record/)(税込表示)